皆さんは一般的な醤油の原材料に小麦が入っていることを知っていましたか?なぜ小麦が入っているのでしょうか?小麦はどんな役割をはたしているのでしょうか?
味噌の原材料は大豆がメインなので、醤油も大豆だけで作ると思ってた!なんて方も多いのではないかしら。私の発酵教室の生徒さんも「知らなかった~」という人がいっぱいいました。
私も昔、醤油に小麦が使われているのを知ったとき、「へぇ~」と思ったし、なぜ小麦が入っているのかをもっと詳しく知ったら、「なるほど!」と関心しました。
今回は、醤油になぜ小麦が使用されているのか、小麦の役割を詳しく書いていきたいと思います。
これを読んで、醤油の事を今よりも知ってもらえたら嬉しいです。
なぜ醤油に小麦が入っているのかね?
一般的な醤油の原材料について
まず、一般的な醤油を作る時の原材料は、
- 大豆
- 小麦
- 塩水
原材料としては、この3つです。
今回は、一般的な醤油というのは、濃口醤油と言われる醤油のことを指すことにします。
なぜなら、醤油はいろいろな種類があって、小麦を使用しない醤油も存在しているからです。そのお話は、また今度に。
では、どんな風に醤油を作っていくのかを説明していきますね。
醤油が出来るまでの工程について
簡単に醤油が出来るまでの作り方の工程を書いてみます。
- 大豆を蒸す。
- 小麦は、煎ってから割る。
- 大豆と小麦を混ぜる。
- 麹菌をつける。
- 麹室(こうじむろ)で麹菌をしっかり繁殖させる。(醤油麹の完成)
- 塩水に醤油麹を入れて混ぜる。
- 1年~かけて、櫂入れ(かき混ぜる)しながら、しっかり熟成させていく。
- 絞る。圧搾(あっさく)
- 静置ろ過する。
- 火入れする。
- 瓶に詰めて完成!
小麦は、最初の段階で蒸した大豆と一緒に麹菌をつけて仕込んでいくのです。
蒸した大豆と一緒に小麦も醤油麹に変身する訳ですね。
なぜ小麦を煎って割る作業をするのか?
では、最初の段階でなぜ小麦を煎って、割るという作業をするのか、という点について。
これは、とっても重要な作業になるのですが、醤油が美味しく出来上がるかどうかは、「醤油麹」が上手に出来上がるかどうかにかかっている、と言ってもいいくらいなんです。
麹造りは、種菌を元に麹菌を培養させていきます。麹を育てる目的は、「酵素」を得るということ。麹菌が生む酵素が醤油の味わいを造っていくのです。
「小麦を煎って割る」という作業は、小麦のでんぷんをα化(アルファー化)させることで、麹菌が生産する酵素の作用を受けやすくするためなんです。α化というのは、でんぷんを加水・加熱し、湖化した状態のことを言います。
もう少し詳しく言うと、麹菌が持っているアミラーゼという酵素が、小麦のでんぷんを分解してブドウ糖を生成するのですが、このような作業をすることで、しっかりブドウ糖が生成するように酵素が作用しやすいようにしてあげている、ということです。
このアミラーゼという酵素が小麦のでんぷんをブドウ糖に変えてくれる、このブドウ糖というのが醤油の発酵過程では、とても重要な役割を持っています。
微生物たちはブドウ糖が好きなんです!
乳酸菌たちとの関係
先程も解説した通り、小麦=ブドウ糖。
小麦のでんぷんから生成されたブドウ糖は、醤油の発酵過程でとても重要な役割をはたしています。
熟成が始まった醤油。微生物たちが活動し始めます。
まず一番に働き出すのは、乳酸菌たち。
乳酸菌は、糖を食べて酸を出します。乳酸菌は甘い物大好きなんです。そうです。小麦のでんぷんが生成したブドウ糖をパクパク食べて、酸をガンガン出していきます。
発酵の過程の中で、この乳酸菌たちがいっぱい寄ってきてくれるというのは、重要なことなんです。乳酸菌が付いてくれることによって、酸度が上がり、雑菌のような悪い菌たちが住み着けない環境を作り出してくれるんです。
乳酸菌たちが寄ってきてくれないと、そのまま悪い菌に占領されて、腐敗してしまうかもしれないんです。
ブドウ糖が乳酸菌たちのエサになり、元気に酸を出してくれる事は、醤油に限らず味噌だって、発酵の工程では、とても重要なことなんですよ。
酵母たちとの関係
乳酸菌たちが小麦のでんぷんが生成したブドウ糖によってしっかり繁殖してくれました。
乳酸発酵によってpHがどんどん下がってきます。pH5.5以下に低下すると、今度は酵母菌たちが登場してきます。
この酵母菌たちも甘い物が大好き!ブドウ糖をパクパク食べて、ブクブク発酵していきます。
このブクブクは、二酸化炭素。そして、酵母菌は、エタノールもガンガン出していくんですよ。
このエタノールが、醤油には重要な「香り」になっていきます。
酵母菌にとっても、ブドウ糖は重要なエサになっているのです。
酵母菌は、酸素得て増えていくので、醤油造りの工程では、櫂入れ(かいいれ)と煎って、長い棒のようなもので、しっかり攪拌しながら、じっくり熟成をしていきます。
その後は、醤油を絞る作業まで、職人さんの手によって、ジワジワと旨みを引き出されていくことになります。
なぜ醤油に小麦だったのか?
なぜ小麦が醤油の原材料になっているのか、それは、醤油の発酵の工程の中で微生物たちをしっかりと働かせるためにブドウ糖が必要だということ。
醤油は沢山の微生物たちが働き、複雑な味わいを出していきます。
もちろんブドウ糖の甘みというのも醤油の味には欠かせないひとつにもなっています。
さて、それではなぜ醤油を造るのに小麦が使用されたのか?という見解ですが、
原材料が、大豆、小麦、塩水の「濃口醤油」に関しては、江戸時代1697年に千葉県で確率されたのが始まりのようです。
それまでは、「たまり醤油」と言われる大豆だけが原材料の醤油が主流でした。
しかし、江戸の料理に合うようにということで小麦を入れて改良をしたところから始まったと言われています。
確かに濃口醤油は関東地方で主流となっている醤油ですね。
味噌で言っても「江戸味噌」も麹の割合が高く、とても甘い味噌というのが特徴です。江戸っ子たちは、甘い味わいがお好きだったのかもしれませんね。
現在では、この小麦が原材料に加わった濃口醤油が醤油の全生産量の8割を占めています。
一般的な醤油と言ったら「濃口醤油」というくらい醤油の代名詞的な存在です。
こんなに全国に普及していく訳ですから、どんな土地でも比較的栽培しやすい小麦が扱いやすかったというのも理由のひとつなのかもしれませんね。
土地によって材料の選定や微生物、熟成樽の違いなど様々です。だから味も全然違う。
いつもはスーパーなどで大手メーカーの醤油を使用されている方々も時々、昔から醤油蔵で造られているような醤油をチョイスしてみるのも良いかもしれませんね。
それでは、今回の「醤油になぜ小麦が使用されているのか?優しく解説します。」をまとめていきましょう。
醤油になぜ小麦が使用されているのか?優しく解説します。まとめ
なぜ醤油に小麦が入っているのかね?
一般的な醤油の原材料について
まず、一般的な醤油を作る時の原材料は、
- 大豆
- 小麦
- 塩水
原材料としては、この3つです。
今回は、一般的な醤油というのは、濃口醤油と言われる醤油のことを指すことにします。
醤油が出来るまでの工程について
簡単に醤油が出来るまでの作り方の工程を書いてみます。
- 大豆を蒸す。
- 小麦は、煎ってから割る。
- 大豆と小麦を混ぜる。
- 麹菌をつける。
- 麹室(こうじむろ)で麹菌をしっかり繁殖させる。(醤油麹の完成)
- 塩水に醤油麹を入れて混ぜる。
- 1年~かけて、櫂入れ(かき混ぜる)しながら、しっかり熟成させていく。
- 絞る。圧搾(あっさく)
- 静置ろ過する。
- 火入れする。
- 瓶に詰めて完成!
小麦は、最初の段階で蒸した大豆と一緒に麹菌をつけて仕込んでいくのです。
微生物たちはブドウ糖が好きなんです!
乳酸菌たちとの関係
- 乳酸菌は、糖を食べて酸を出します。小麦のでんぷんが生成したブドウ糖をパクパク食べて、酸をガンガン出していきます。
- 乳酸菌が付いてくれることによって、酸度が上がり、雑菌のような悪い菌たちが住み着けない環境を作り出してくれるんです。
酵母たちとの関係
- 酵母菌は、ブドウ糖によって、二酸化炭素とエタノールを排出していきます。
- 酵母菌が出すエタノールは醤油にとって重要な「香り」になっていきます。
なぜ醤油に小麦だったのか?
- 醤油の発酵の工程の中で微生物たちをしっかりと働かせるためにブドウ糖が必要だということ。
- ブドウ糖の甘みというのも醤油の味には欠かせないひとつにもなっています。
- 原材料が、大豆、小麦、塩水の「濃口醤油」に関しては、江戸時代1697年に千葉県で確率されたのが始まりのようです。それまでは、「たまり醤油」と言われる大豆だけが原材料の醤油が主流でした。しかし、江戸の料理に合うようにということで小麦を入れて改良をしたところから始まったと言われています。
- どんな土地でも比較的栽培しやすい小麦が扱いやすかったというのも理由のひとつなのかもしれませんね。
いかがだったでしょうか?濃口醤油と言っても日本全国に沢山の種類があります。原材料や職人さんの技、微生物たちの違いなどで味も様々です。是非、いろいろな醤油を試して頂けたらと思います。
美味しい醤油に出会いたかったら、まずは自分のお住まいの近くの醤油蔵を探してみるところから始めてみて下さい。
それでは、皆さん、良い熟成を・・・・
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